論文・臨床ノート

脳卒中後の肩の痛みは亜脱臼だけ?評価・ポジショニング・生活場面の見方

脳卒中後の肩の痛み 原因と生活場面を整理
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まず押さえたい3つのこと

  1. 肩痛は原因を一つに決めず、評価につながる情報をそろえる。
  2. 安静時・介助中・生活動作中を分けて、支持と痛みの関係を記録する。
  3. 新しい痛みや腫れなどは、練習の工夫だけで済ませず医療者へ共有する。

「肩が下がっているから痛いのだろう」と考えると、着替えの介助、座り方、夜間の負担などが見えなくなることがあります。この記事の目的は原因を自己診断することではなく、チームで原因を評価し、生活場面の調整を話し合える情報を集めることです。

目次
  1. まず押さえたい3つのこと
  2. 肩痛の原因は、見た目だけでは決まらない
  3. 痛みは、退院前の一度の確認で終わらせない
  4. ポジショニングでは、肩だけでなく腕全体を支える
  5. 痛みが減ったことと、原因が特定できたことは別
  6. 「いつ痛いか」を3つの場面に分ける
  7. 仮想例:訓練中は楽でも、着替えで痛い
  8. 申し送りに、変更した条件と残った問題を添える
  9. この記事で補足したい疑問
  10. 出典と確認した範囲

肩痛の原因は、見た目だけでは決まらない

カナダの2025年指針は、脳卒中後の肩痛を複数の要因が関わる問題としています。痛みの原因を評価するため、筋緊張、能動運動、軟部組織、肩甲帯の配列、体幹姿勢、痛みと生活への影響を確認します。亜脱臼が見られることだけで、痛みの原因を確定する扱いではありません。

出典:[1] Heart & Stroke, Canadian Stroke Best Practices

痛みは、退院前の一度の確認で終わらせない

Lindgrenらの地域ベースの前向き研究は、初発脳卒中416人を登録し、4か月時点で327人を追跡しました。そのうち71人(22%)が発症後4か月以内の肩痛を報告しています。16か月の追跡では新たな痛みも生じ、着衣などの日常生活への制限が報告されました。

これは肩痛の経過を観察した研究です。特定の支持具の予防効果や、亜脱臼と痛みの因果関係を証明した試験ではありません。

出典:[2] Lindgren I, Jönsson AC, Norrving B, Lindgren A

ポジショニングでは、肩だけでなく腕全体を支える

公式指針では、低緊張の時期の安静時の支持・ポジショニングや、移乗時の保護が重視されています。麻痺側上肢を引っ張ることは避けます。痛みを伴う肩を無理に動かすのではなく、原因と運動条件の確認が先です。

急な外傷などを除外したうえでCRPS(複合性局所疼痛症候群)が疑われる場合には、早期の専門医評価が重要とされています。肩や手の新たな痛み、腫れ、皮膚の変化は、運動を増やす理由にせず医療者へ共有します。

出典:[1] Heart & Stroke, Canadian Stroke Best Practices

痛みが減ったことと、原因が特定できたことは別

腕の置き方を変えて楽になっても、それだけで診断は確定しません。同じ調整で常に楽になるか、別の動作ではどうか、本人がどの変化を感じたかを分けて残します。

急な強い痛み、転倒後の痛み、新たな腫れなどがある場合は、この記事の表を埋めるために動作を再現せず、実施を止めて医療者の評価を優先してください。この図表は診断・受診の要否を自動判定するものではありません。

「いつ痛いか」を3つの場面に分ける

以下は、観察と申し送りのための編集上の整理案です。痛みの強さだけでなく、どの動作のどこで変化したかを書くと、看護・介護・リハビリの間で条件を共有しやすくなります。

新しい痛みや変化を共有し原因評価につなげる。安静、介助、本人の動作の場面を分け、変更した支持と反応を記録する流れ。
リハノート作成。本文の検討手順を図示した編集上の提案です。診断基準・治療プロトコルではありません。
場面安全な範囲で共有する情報避けたいまとめ方
安静・座位腕の置き場所、体幹の向き、時間経過、本人の訴え「座っているだけだから関係ない」
更衣・移乗の介助どの工程で、どの支え方のときに痛みを訴えたか「介助中はいつも痛い」だけ
本人の動作動作の開始位置、到達先、休止後の変化「動くと痛いので何もしない」
調整した後変えた点、本人の反応、未確認の場面「クッションで治った」

仮想例:訓練中は楽でも、着替えで痛い

説明用の仮想例です。机上で腕が支持されている場面では苦痛が少ない一方、袖を通すときに痛みを訴える人を考えます。「訓練では痛くない」という情報だけでは、更衣の問題は解決しません。

原因の評価を依頼しつつ、更衣のどの工程で訴えが出たか、腕の重さを誰がどのように支えていたかを共有する案です。実施していない介助方法を「安全」と断定せず、担当チームが確認した方法を共通化します。

申し送りに、変更した条件と残った問題を添える

記載例は「座位では前腕を支持すると本人は楽と説明。袖通しの際の痛みは残るため、原因評価と介助方法の確認を依頼。支持の変更だけで更衣を進めてよいとは判断していない」です。これは説明用の例です。

姿勢の写真を共有する場合も、本人の同意と所属先の情報管理に従います。公開の質問欄へ患者さんの写真や病歴を送るのではなく、院内の適切な手段で共有してください。

この記事で補足したい疑問

編集時に想定した疑問をまとめています。

肩の亜脱臼があれば、それが痛みの原因ですか?

一つの所見だけで原因を決めません。筋緊張、運動、組織、生活場面などを合わせて医療者が評価します。

クッションを置けば十分ですか?

支持は一つの検討点です。置く場所や姿勢の適合、介助中の保護、痛みの原因評価を省略できるわけではありません。本人の反応と実際の場面を確認します。

出典と確認した範囲

以下は今回参照した資料です。網羅的なシステマティックレビューではありません。抄録のみ確認した資料は明記しています。

  1. Shoulder Pain and Complex Regional Pain Syndrome (CRPS) following Stroke
    Heart & Stroke, Canadian Stroke Best Practices Delivery of Stroke Rehabilitation, Part Two, 2025. Section 2.
    公式推奨本文を確認 · 確認日 2026-09-18
  2. Shoulder pain after stroke: a prospective population-based study
    Lindgren I, Jönsson AC, Norrving B, Lindgren A Stroke. 2007;38(2):343–348. DOI: 10.1161/01.STR.0000254598.16739.4e
    PubMedの書誌・抄録を確認(全文未確認) · 確認日 2026-09-18
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