論文・臨床ノート

脳卒中のCI療法とは?適応と「使える手を生活で使う」ための考え方

CI療法、どう考える? 適応と生活での使い方
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まず押さえたい3つのこと

  1. CI療法は健側を制限するだけの方法として扱わない。
  2. 研究の対象条件と、目の前の人の安全性・負担・希望を照合する。
  3. 課題の遂行と、生活で使う頻度や場面を分けて確かめる。

コップをつかめるのに、生活ではいつも反対の手を使う。CI療法を検討する入口になる問いですが、それだけで適応は決まりません。ここでは「動かせる能力」「使う機会」「実際の使用」を分け、研究の成果を生活場面へ短絡させない読み方を整理します。

目次
  1. まず押さえたい3つのこと
  2. EXCITE試験が比較したのは、2週間のプログラム
  3. 上肢の検査結果とADL全体の自立は同じではない
  4. 適応を考える前に、どのCI療法を想定しているか確認
  5. 「使わない」を一つの原因で説明しない
  6. 検査・練習・生活を、同じ条件だと思わない
  7. 仮想例:ブロックは運べるが、洗面では使わない
  8. 再評価では「できた」と「使った」を二段で残す
  9. この記事で補足したい疑問
  10. 出典と確認した範囲

EXCITE試験が比較したのは、2週間のプログラム

EXCITE試験では、発症3〜9か月の222人をCI療法群106人と通常ケア群116人に分けました。CI療法は非麻痺側のミットによる制限に加え、麻痺側の反復課題練習と行動的な段階づけを含むプログラムです。

12か月までの変化では、CI療法群のWMFT遂行時間とMALの使用量・動作の質の改善が大きく報告されました。通常ケア群の内容には幅があり、この結果から「ミットだけの効果」や他の集中的練習すべてに対する優越性は判断できません。

出典:[1] Wolf SL, Winstein CJ, Miller JP, et al.; EXCITE Investigators

上肢の検査結果とADL全体の自立は同じではない

2015年のCochraneレビューは42研究1453人を含み、上肢運動機能の改善に比べ、生活上の障害の軽減は明確でないとまとめています。研究間で対象や介入内容が異なり、小規模研究も多い点が限界です。

EXCITEのMALは生活での腕の使用を扱いますが、入浴や更衣の自立度全体と同じ指標ではありません。「手を使うようになった」と「介助が不要になった」は、別々に確認する必要があります。

出典:[2] Corbetta D, Sirtori V, Castellini G, Moja L, Gatti R / [1] Wolf SL, Winstein CJ, Miller JP, et al.; EXCITE Investigators

適応を考える前に、どのCI療法を想定しているか確認

カナダの2025年指針は、高強度CI療法を、手関節・手指の随意伸展、感覚、認知などの条件を満たす選択された対象に推奨しています。実施時間などを変えた修正版と同じ条件として扱わず、採用するプロトコルを確認します。

出典:[3] Heart & Stroke, Canadian Stroke Best Practices

「使わない」を一つの原因で説明しない

生活で手を使わない理由には、課題の難しさ、痛みや疲れ、習慣、道具の配置、時間の制約など、確認したい候補があります。観察だけで一つに決めつけず、本人の説明と実際の場面を合わせます。

非麻痺側の使用制限は、移動や身の回りの動作に影響し得ます。本人の理解と希望、安全性、援助体制を含め、訓練を担当する専門職が判断する必要があります。この記事をもとに日常で片手を縛る・使えなくすることは勧めません。

検査・練習・生活を、同じ条件だと思わない

次の表は編集上の比較案です。練習室で成功した条件を生活に並べ直すと、「能力がない」という説明以外に検討する点が見えます。これはCI療法の正式な実施手順や適応判定表ではありません。

課題を遂行できる能力、生活で使う機会、実際に使った場面を分けて確認する3段階。
リハノート作成。本文の検討手順を図示した編集上の提案です。診断基準・治療プロトコルではありません。
比べる条件練習室の例生活で確かめる問い
物の性質軽くて持ちやすい物普段の食器や衣服でも同じか
開始位置手元に準備された物本人が準備する工程はどうか
時間急がず取り組める食事や外出の時間に追われないか
支援担当者が声をかける声かけなしでも選ぶ場面があるか
本人の目標指定課題を完了する何の動作なら使いたいと思うか

仮想例:ブロックは運べるが、洗面では使わない

説明用の仮想例です。机上でブロックを移せる人が、洗面では非麻痺側だけを使っていたとします。練習量を追加する前に、洗面台の配置、立位か座位か、片手で済む手順になっていないかを確認する案を考えます。

「朝は急ぐので使わない」と本人が話したなら、その説明を記録し、本人が試したい別の機会があるかを相談します。生活に戻す課題を本人と選ぶことと、研究のプログラムを同じ量で再現することは別です。

再評価では「できた」と「使った」を二段で残す

「同じ物を同じ条件で扱えたか」という課題の結果と、「どの生活場面で、どの援助のもとで使ったか」を並べます。生活で使ったという本人の報告と、担当者が直接観察した事実も区別すると、申し送りが明確になります。

変化が小さい場合も、すぐに意欲の問題とせず、実施条件・負担・目標の一致を見直します。使用回数だけを増やすより、本人が続けたい活動とのつながりを確認することを提案します。

この記事で補足したい疑問

編集時に想定した疑問をまとめています。

CI療法は健側の手を使わせないだけですか?

制限だけではありません。紹介した試験は反復課題練習と段階づけを含むプログラムです。制限時間だけ再現して同じ効果を期待しないようにします。

重度麻痺なら対象外ですか?

一つの重症度の呼び名だけでは決められません。今回の根拠と目の前の人の運動・感覚・認知の条件を照合し、適さない場合も別の目標や介入を検討します。

出典と確認した範囲

以下は今回参照した資料です。網羅的なシステマティックレビューではありません。抄録のみ確認した資料は明記しています。

  1. Effect of constraint-induced movement therapy on upper extremity function 3 to 9 months after stroke: the EXCITE randomized clinical trial
    Wolf SL, Winstein CJ, Miller JP, et al.; EXCITE Investigators JAMA. 2006;296(17):2095–2104. DOI: 10.1001/jama.296.17.2095
    PubMedの書誌・抄録を確認(全文未確認) · 確認日 2026-09-18
  2. Constraint-induced movement therapy for upper extremities in people with stroke
    Corbetta D, Sirtori V, Castellini G, Moja L, Gatti R Cochrane Database of Systematic Reviews. 2015;10:CD004433. DOI: 10.1002/14651858.CD004433.pub3
    Cochrane公式の一般向け要約・公開抄録を確認(レビュー全文未確認) · 確認日 2026-09-18
  3. Upper Extremity Function – General Principles and Therapies
    Heart & Stroke, Canadian Stroke Best Practices Delivery of Stroke Rehabilitation, Part Two, 2025. Section 1.
    公式推奨本文を確認 · 確認日 2026-09-18
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